関東パチンコ軍団に取材

関東パチプロ軍団『パチンコの6段階設定』について取材してきました




2017年7月7日、新宿の某喫茶店にて



くうか「初めまして」


Tさん「初めまして」


見た目はコワモテだが、話し方はどちらかというと優しい感じだった。


店員「ご注文は?」


くうか「あ、ミックスジュースで」


Tさん「僕もミックスジュースで」


くうか「えっ!?」


Tさん「えっ?」


くうか「ミックスジュース飲むんですか?」


Tさん「え、ダメでしたか?」


くうか「いえ……すみません」



私は勝手にコーヒー系を頼むものだと思い込んでいた。出会って数秒でミックスジュースとか似合わないですねとは流石に言えなかった。だけど、ミックスジュースのお陰か、少し緊張はほぐれたかもしれない。さて、バンバン聞いていこう。いけるとこまで踏み込んでいこう。




くうか「Tさんはパチンコ歴は何年なんですか?」


Tさん「パチンコ歴は5年程ですかね」


くうか「5年ですか…?思っていたより短いですね…。大体年間おいくらくらい稼いでらっしゃるのですか?」


Tさん「大体ひと月200万前後なんで2400万円くらいですかね」


くうか「えっ」


Tさん「2400万円です」


くうか「えっ?もう一度お願いします」


Tさん「ひと月200くらいなんで2400万円です」


くうか「もう一度お願いします」


Tさん「3000万円くらいです」


くうか「な、なんで最後盛ったんですか!?」


Tさん「絶体聞こえてるなぁと思いまして…」



年収2400万円……見た目的に30代だろうこの人が年収2400万円……。単純にかなりの額だ。



Tさん「でも盛ってるんじゃなく、そういう年もありましたよ」


くうか「マジですか…」


Tさん「僕、元々スロットで食ってたんです」


くうか「え、スロットもやりはるんですか?」


Tさん「4号機の頃からずっとスロットで食ってて……で、規制の嵐でどうしようかと思ってたらパチンコの方が稼げるんじゃね?と思ったんです」


くうか「なるほど」


Tさん「当時はまだそれほど捻り打ち禁止のホールとかはなくて、腕さえ磨けば何とでもなりました」


くうか「私、捻り打ちしたことないです。止め打ちくらいです」


Tさん「ラウンドごとに止めたりとかですよね?」


くうか「そうですそうです!」


Tさん「あれって機種ごとに次のラウンドが始まる間隔が違いますよね?」


くうか「そうですね。北斗のゼロアタッカーとかストレスなく打てましたね」


Tさん「簡単に言えばそういうことなんです。同じボーダーラインの機種、同じ回転数だったとしても止め打ちが効く機種を狙うわけです」


くうか「それが甘い機種ってことですよね?」


Tさん「そうですね。あと、あまり知られていないのが台のクセですね」


くうか「台のクセ?スルーが優秀な台があるとかは聞きますけど、そういうことですか?」


Tさん「あ、意外とパチンコ知ってるんですね」



少し微笑むTさん。



くうか「去年くらいまではパチスロよりパチンコの方が好きだったので…」


Tさん「では、そのクセがある台を狙うという意味は解りますか?」


くうか「クセがある台を狙う……?」


Tさん「分かりやすくいうとよく回る台ですね」


くうか「それは分かります!これでもボーダー派なんで」


Tさん「それ今の時代はもはや死語ですよ(笑)オカルト派のプロなんていません」


くうか「確かに」


Tさん「で、そのクセが優秀な台を狙うという意味合いは、ホール側の調整の仕方にあるんです」 


くうか「調整の………仕方ですか?」


Tさん「はい。大抵のホールはパチンコ台を調整する時、ほぼ全台同じ回転数になるように調整します」


くうか「千円で20回なら20回まわる調整にするってことですよね?」


 Tさん「そうです。それがあまり知られていないことでもあるのです。パチンコはパチスロみたいに、この台番の回転数だけを上げたい!というようなことはあまりしないです」


くうか「えっ?」


Tさん「偶然なんです。全台同じ調整にしてるはずなのに全台、回転数が違うようになるんです」


くうか「それってパチスロで例えるなら設定3にしてるのに、勝手に設定1や設定5になっちゃってるってことですか?」


Tさん「あ、わかりやすい。そういうことです」

 

くうか「マジですか」


Tさん「+3や-3は普通です」


くうか「つまり20回転に調整してるけど、23回転や17回転の台達がその機種のシマに偶発的に散りばめられていると?」 


Tさん「そういうことです」


店員「お待たせいたしました」 



ここでダブルミックスジュースが到着した。二人とも話を止めてミックスジュースを飲み始めた。うん、おいしい。




Tさん「あとはそのよく回る優秀台を朝イチにおさえて終日、止め打ち捻り打ち作業をこなすだけです」


私はジュースを飲みながら頷いた。


Tさん「パチンコで勝つのはスロットより簡単です。良いホールを見つけ、よく回る台をチェックし、朝イチにその台をおさえて打つ。これだけです」


くうか「パチンコは設定が見えてるスロットみたいなものですよね」


Tさん「だからスロットをやめてパチンコに移行したんです。低設定を半日打つリスクを負いたくないですからね」


くうか「パチンコなら数千円、数十分で調整されてるかわかりますもんね」


Tさん「もう3年以上はパチスロ触ってないです(笑)」


くうか「えっ!?」


Tさん「だから正直、今のパチスロ規制がどうなってるのかすら知りません」


くうか「徹底してますね……」 


Tさん「生活の為にやっていることですから。魚屋さんが野菜のことを知らなくても普通でしょ?」


くうか「面白い喩えですね」


Tさん「ありがとうございます(笑)」



ここで、話を本題へと移す。





くうか「色々と軍団エピソードとかを聞いていきたいのですが、今回は来年度から始まるかもしれない『パチンコの6段階設定』についての話ですので、そちらをお聞きしたいと思います」


Tさん「売り上げ金を持ち逃げされたとかのエピソードはいいんですか?」


くうか「んめっちゃ聞きたい!!けど、今回は我慢します(笑)」


Tさん「わかりました。ぶっちゃけ僕、その頃にはもう軍団を解散しようと思っています。遅くても2020年までには」


くうか「えっ!?そんなに稼いでいるのに!?」


Tさん「もう今年から違う仕事をしようかなと」

 

くうか「まだ稼げるんじゃないですか!?」


Tさん「うーん、それはそうですけど、今のうちから動いておかないといけないかなーって」


くうか「時代を視る力って大事ですよね」


Tさん「ほんとにそうですよ。あの甘々だった牙狼が撤去される前には僕らは沖海に移行していましたし」


くうか「らしいですね」


Tさん「他の軍団もどんどん消えていくでしょうね」


くうか「大変申し訳ないのですが、一般ユーザーからすると軍団の存在は決して良いものではないという意識が強いので、一般ユーザーからするとそれは良いことになるのでしょうか?」


Tさん「そうですね。一般の方からすると僕らみたいな軍団はいなくなってくれた方が良いでしょうね」


くうか「ただ、私は集客に携わっている立場なので、一般ユーザーさんの気持ちが解ると同時に、軍団と呼ばれる方達の存在意義も解るのです」


Tさん「あ、そうなんですか(笑)ありがとうございます。何て言いますか、僕達が朝イチから並んで頑張ってシコシコと出して出玉をアピールして、それから一般の方が「この店よく出してない!?」となって優良店アピールができてると思うんです」


くうか「広告や宣伝ができない時代ですもんね」


Tさん「まぁ、それは綺麗事でぶっちゃけそうでも思っていないと社会の何の役にも立ってない存在となってしまうんで(笑)全てホールの人間も解った上でうまく持ちつ持たれつの関係でやっていけたのかなぁというのもあります」


くうか「自分達のことだけじゃなく、色んな視点で語れる人は素敵だと思います。大抵、軍団の人達ってマナーもルールもない人達だって思われがちじゃないですか」


Tさん「うーん、それはね、あれですよ。末端の人間はそういう子達が多いですよね、確かに。でも元締めや班長クラスになると一端の社会人より頭の回る人達ばかりですよ。マナーはどうか知らないですけど。僕とかは敢えてやったりするので(笑)」


くうか「計算で無茶してる時もあると?」


Tさん「そりゃそうですよ!みんなそうなんじゃないですか?じゃないと組織が成り立ちませんよ、トップが常識知らずや感情的に動く奴なら」


くうか「大変なんですね……」


Tさん「(笑)自分の生活と自分についてきてくれる子達を食わせていく為なら何だってしますよ」


くうか「軍団は解散するとのことですが、具体的にはいつとかありますか?」


Tさん「それはないかな。6段階設定が始まったら最初は稼ぎ時なのは間違いないし、かといってオリンピックが確定している以上、規制を緩めることもないし……あれって、ホールの数を減らしていこうプロジェクトみたいなんがあるんですかね?何か知ってます?」


くうか「いや、知らないです。知ってても言わないです(笑)」


Tさん「ホールの数を現在の半分にしよう!とか目標を立てられてそうで……(笑)」


くうか「確かに(笑)上の人達は現状を見ずに数字だけで目標を立ててるのかもしれませんよね。業界の内情をリサーチせずにホールの数だけを見て決めてるのかも……と」



Tさん「なかなか目標数にならないから追撃追撃で新手の規制をふっかけてきたりとかね」


くうか「ありえますよね(笑)」



暫くの沈黙。店内に他の客はあまりいなかった。店内BGMはジャズ風な音楽が流れていた。その音感にノっているとTさんに笑いながら指摘されので、すぐに話を再開した。






くうか「話をまとめますと、6段階設定になった場合、今までのパチンコの長所、つまり設定が透けて見えていたのが、封入式の6段階設定パチンコとなり、リスクが増えてリターンは減る稼ぐにあたって最悪の時代に突入するので、軍団を解散する、と?」


Tさん「そうですね。他の軍団も一気にではないでしょうが減りますね」


くうか「ズバリ、どれくらいになると予想されますか?」


Tさん「2020年までには2割くらいになってると思います」


くうか「!?  8割の軍団が消滅すると?」


Tさん「2割も残ったら良い方なんじゃないですか?」


くうか「そうですか……」


Tさん「僕らは20人前後の軍団ですが、もっと大きな軍団もありますからその軍団は何としてでも存続させる方向に向かうでしょうね」


くうか「え、もっと大きなところがあるんですか?」


Tさん「全然ありますよ。それがまた稼げるシステムなんで、頭の良いトップ達がそう易々と手放すとは思えないんで、ただの憶測ですけどね」


くうか「20人……大変ですよね」


Tさん「マンションを借りてあげたり住むところも用意しています」


くうか「マンション!?」


Tさん「ルームシェアとか含めてですよ」



当たり前のように淡々と話すTさん。



くうか「打ち子の方の日当は下がりますかね?」


Tさん「うーん、これは意外と下がらないかもしれません。それより班長クラス以上の取り分が下がるでしょうね。僕ならそうします」


くうか「Tさんは軍団の人達のことをちゃんと考えてる印象なのですが」


Tさん「そうですねぇ、忠誠心を持ってやってる子には軍団がなくなっても何とか仕事を与えてあげたいなとは思っていますよ。それが僕なりの感謝の気持ちというか…………まぁ、ありがとうなといった気持ちですね」


くうか「でも20人も大変じゃないですか?」 


Tさん「あ、忠誠心を持ってやってくれてる子は見てて解るんで。お金だけでついてきてくれてる子は、軍団活動中は当然面倒を見ますが、それ以後は知らないです(笑)冷たいかもしれないけど」


くうか「いや、充分だと思いますけど!倒産しても社員+アルバイト全員を救済する人なんていてないでしょうし」


Tさん「でもまぁそんな子達にも家を借りてあげたり、困ったら援助したりして自分的にはちゃんと接してるつもりなんですけどね」



二人ともミックスジュースを飲み干した。美味しかったのでおかわりしたかったが、なんだこいつと思われそうなのでやめた。




くうか「最後に」


Tさん「はい」


くうか「オリンピック以降はどうなると思います?」


Tさん「オリンピック以降ですか?」


くうか「はい。私はこれでもパチスロ業界の発展の為に自分にできること、自分にしかできないようなことを模索して口先だけじゃなく実行に移していきたいと思っています」


Tさん「発展……していきますかね?」


くうか「黙ってても発展していくような業界なら、敢えて新しいことをしようとは思いませんが、衰退していくのは誰の目にも明らかなので…」


Tさん「明らかですね(笑)僕ももう少しいたかったかなという思いは少なからずありますよ。いくらビジネスと割り切っていたとしてもね」


くうか「何もしないのに業界の不満や台がつまらないとかは言いたくないんです。それは一般ユーザーさんの仕事であって、私は多少なりともこういうお仕事をさせていただいている身なので、どうにか恩返しをしたいという思いが強いのです」


Tさん「恩返し………ああ、わかります。なるほど。わかりますよ」


この時、何かが伝わった気がした。



Tさん「僕はこの稼業を始めて後悔したこともありました。大切な20代30代のほとんどをパチンコやパチスロに費やしてしまいました。勿論、楽しかったからここまでやってこれたのですが、やはりたまぁに……たまぁにですが、やってなかったらどうなんだろうと思うことがあります」


水を一口飲んで少しの間の後、再び話し始めるTさん。



Tさん「でも学んだことも多くありました。もし普通のサラリーマンをしていたら学べただろうか?プロとしてピンでやっていた時も色々と学んだし、軍団を作ってからも人が何を考えてどう動くのかも学べました。さっきチラッと言いましたが、お金を持ち逃げされたこともありました。でもその損失よりも得たものは大きかったと今では思えます。その持ち逃げした相手を無条件で許せるほど、学べたことに感謝しています。だから僕はこれからもこの軍団をやっていたことを隠すつもりはありません。周りから何と言われようと、その経験があったから今成功してるんだと堂々と言えるようにこれから頑張るつもりです」


くうか「したいことをして生活ができるということに感謝できない人間はダメだと思っています。Tさんのお気持ちは強く共感できますよ」


Tさん「ありがとうございます。長らく一般の方の出玉を間接的に奪うような生活をしてきました。正直、そういう殺伐とした日常から抜け出して、この生活で培ったモノを他の新しい道で試したい…!という思いは常にあったんです。だから6段階設定が始まるよりもずっと前に完全に足を洗っているかもしれません」



くうか「2020年……」


Tさん「はい」


くうか「オリンピックが終わった2020年以降、国際的圧力がなくなった7号機時代に、また4号機時代の活気は業界に戻ってきますかね?」


Tさん「………」


くうか「それを期待してしまうのは馬鹿でしょうか?」


Tさん「それはくうかさんの方がよく解ってるでしょう?」


一瞬驚いた後、少しの間、無言で笑い合った。




くうか「待ってますね?」


Tさん「いやいや、どこでです?」


くうか「新しいステージで」


Tさんは少し笑い


Tさん「何か一緒に仕事ができたら良いですね」


くうか「本当に」


Tさん「楽しそうだ」







そこでインタビューは終了し、関係ない話を10分程話した後、店を出た。Tさんは高そうな白い車で西の方へと走っていった。Tさんとは私がお世話になっている方の友人で、数字にも強く頭の良い人だけどドヤンキー(笑)だと聞いていた。最初は少し萎縮してしまったが話し方など、優しい感じで好感が持てる人だった。

でもまぁ最後に何かあったら呼んで下さいよ、力になりますんで!!と凄んでいたので、そういう系の人なのは間違いないんだろうなぁとは思いました(笑)



未来はもっと厳しくなるこの業界。軍団の数が減ったからといって、簡単に勝ちやすくなる甘い時代ではない。勝つよりも楽しめたら良いという心のシフトチェンジは思ってる以上に難しい。2020年以降の規制緩和を期待するよりも今の経験を大事にした方が前向きになれそうだと思った。


その思いを大事にしていれば、たとえ一つの時代が終わったとしても

きっとまた素敵なものが見つかると信じられる気がした。








名前:T


年齢: 35


専業歴:16年


地域:関東


好きな機種:スロット BMAX・5号機ガンダム  パチンコ 水戸黄門


好きな食べ物:ラーメン